6月のバージョン・アップ・セール期間にNative Instruments KOMPLETEを11にバージョン・アップしたのはいいのですが、なかなか使い込む時間がなく、KOMPLETE 11で加わった音源が使えるものかどうかをテストしようと思いながら、時間ばかりが経過してしまいました。じっくりと使い込むまでは行きませんでしたが、ある程度弄ってみた段階での各音源の印象を書いてみることにしました。

String Ensemble Essentials
String Ensemble Essentials

まずおそらくKOMPLETE 11 ULTIMATEで一番の売りになるであろう、オーケストラ音源のString Ensemble Essentials、Woodwind Ensemblもe Essentials、Woodwind Solo Essentials、Brass Ensemble Essentials、Brass Solo EssentialsのSymphonyシリーズですが、KOMPLETEに収録されているのはEssentialsと表記されているとおり、フル・ヴァージョンのSymphonyシリーズからの抜粋となっています。オーケストラ楽器の中からストリングス系、木管楽器系、金管楽器系に分けた音源となっていますが、なぜかストリングス系だけはアンサンブルだけ、木管と金管はアンサンブルとソロ・ヴァージョンが用意されています。ストリングス系にソロ・ヴァージョンが無いのは、オーケストラの中でストリングスは人数勝負なところがあるのと(笑)、ヴァイオリンやチェロのソロはそれなりにアーティキュレーションを豊富に用意しないと格好がつかないということもあるのかなと想像しています。フル・ヴァージョンのString Ensembleは34GBの容量があるのに対してEssentialsヴァージョンは3.5GBと約10分の1の容量になっていますので、限界はどうしてもあります。アーティキュレーションを限定しているのと、マイク・ポジションを1つだけに絞ることで容量を節約しているようで、ストリングスの場合アーティキュレーションが仕様には38と書いてあったのですが、各楽器ごとに38ずつあるわけでは無く、例えばViolins 1にサスティン、ソルディーノ、トレモロ、トリル、ハーモニクス、スタッカート、スピカート、ピチカートの8種類といった具合で全楽器合計38ってことなので、ちょっと物足りない感じがします。マイク・ポジションも割とオフ・マイクめのリヴァーブ多めな感じのポジションになっているので、単独で聞くと「あれ、ちょっと遠いな」という気がしますが、意外とアンサンブルを組んで聞いてみるとリヴァーブ多めなのが迫力に繋がって、賑やかな感じはします。クラシックのオーケストラ曲と言うよりはリズム・セクションもいて、賑やかし的にオーケストラを鳴らすような作りの楽曲には合いそうな気がします。私の場合、クラシックのオーケストラ曲用にはViennaやMiroslav String Ensemble、EastWest Hollywood Orchestraを使うことが多いので、そこに食い込むにはちょっと物足りないと言えるでしょう。シネマティック系にはそこそこ使えるかも知れません。

Strummed Acoustic
Strummed Acoustec

もうひとつ私がKOMPLETE 11の音源の中で期待していたのがアコースティックギター音源のSession Guitarist-Strummed Acousticでした。基本的に私は宅録時にはギターやベースは自分で弾くんですが、狭いスタジオの中でアコースティックギターをいい状態で録るのはなかなか条件的に難しいこともありますので、近頃はもっぱらエレアコを使ってしまっていますが、エレアコだとどうしても音が細くなりがちなので、それをカバーするアコースティックギター音源があったらいいなと思って使ってみました。で、当初はMusic Lab Real GuitarやApplied Acoustic Systems Strum GS-2のような、コードを弾くと6弦から1弦に向かってダウンストロークするように再生する、あるいは逆にアップストロークするように再生するといった振る舞いをする音源を想像していたのですが、このSession Guitarist-Strummed Acousticはコード弾きしているフレーズをまんまフレーズサンプリングした音源でした。Native Instrumentsの音源全般がどちらかというとクラブ系とか、ヒップホップ、ハウス系など寄りの音源が多いので、発想としては非常に分かる気がします。ストロークのパターンも豊富に用意されていますし、これを切った貼ったしていくと、結構それだけで曲になっちゃいそうです。当然実際にコード弾きしている演奏をサンプリングしているので、下手にアコースティックギター音源を打ち込みでコード弾きさせるよりは生っぽく仕上がりますので、手軽でいいと言えばいいですね。ただやはりコードの積み方とか、ストロークのパターンに細かくこだわりたいという人にはちょっと物足りないかも知れません。じゃあ自分で弾けよ、ってことですかね。そう考えるとReal Guitarってすごくいい音源だったんだなと今更ながら実感。ついこの間までセールやってたのに買わなくて失敗した。

India
India

さて、もうひとつKontakt系の音源で追加になったエスニックもの、Indiaですが、これはドール、ドーラク、ガタム、カンジーラ、コール、ムリダンガム、パカワジ、タブラの8つのパーカッションと、バンスリ、ハルモニウム、サントゥール、シタール、タンブーラ、トゥンビのメロディ楽器6種類を収録したインド楽器の音源集です。たまたま先日とある研究会で60年代にインド哲学が音楽界に与えた影響について考察する機会があり、ちょっとインド音楽に対する興味が盛り上がってきたところでもあって、いいタイミングでのテストになりました。とは言え、私はインド音楽についてはそれほど詳しくは無いので、せいぜいラヴィ・シャンカールとか位しか本場のインド音楽は聞いてないのですが、タブラやシタールはインド音楽以外でも使われる機会の多い楽器ですので、楽曲にエスニックなエッセンスを加えるという用途で使うことも多いでしょう。実際私もタブラを使ってやってみたい曲というと、ビートルズの「ウィジン・ユー・ウィザウト・ユー」だったり、ゴブリンの「サスペリア」だったりするわけで、純粋なインド音楽では決して無いのですが、そうした用途には十分に応えてくれる音源だという印象です。パーカッション系は楽器のワンショットのサンプルを何パターンかずつ収録しているので、MIDIで独自のパターンをプログラミングして使うこともできますし、リズム・パターンのライブラリも付属するので、それを利用してインドらしいリズム・パターンを作ることも可能です。前述のStrummed Acousticに比べると、その点自由度が高くなっているので、実際の楽曲制作には利用範囲が広がりそうです。今回テストした音源の中では一番使ってみたいと思える音源でした。

この他にKOMPLETE 11 ULTIMATEでは、各鍵盤に1本ずつの弦が対応した特殊なピアノUNA CORDA、フレーズ・サンプリングされたストリング・アンサンブルEMOTIVE STRINGS、サンプルをモーフィングさせるシンセサイザーFORM、パフォーマンス・シンセサイザーFLESHなどが加わっていますが、私のやっているような音楽での使い道にちょっと困る感じですかね。KOMPLETEの音源もちょっと使う人を選ぶようなところがあるので、決して汎用音源とは言えないなというのが今日の感想でした。

 

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