前2回でハードウェア・アンプ・シミュレータについて書きましたが、今回はソフトウェアのアンプ・シミュレータについてです。私が自宅スタジオでギターのレコーディングを始めた当初は、ソフトウェアのアンプ・シミュレータとしてはIK MultimediaのAmpliTube2を主に使っていました。IK Mutimedia社の製品は価格的に手頃で、プラグイン関係も当初はIK MultimediaのT-Racksもよく使っていました。イタリアらしい雑駁なところもあるのですが、それがまたいい味を出していて、緻密にモデリングしているというのとはまた違うのですが、特徴をよく捉えたモデリングというか、デフォルメするところはして特徴をより強調する、みたいなところが私は気に入っていて、ひところはマスタリングの際に必ずT-RacksのコンプやEQをかけていました。このいなたい感じが、本家のアメリカの西部劇に対してマカロニ・ウエスタンを作ってしまった映画界みたいな感じで、胡散臭さを漂わせつつも、本家本元よりも本物らしさを作ってしまうイタリアならではって感じがいいですね。

Stealth Pedal
Stealth PedalはAmpliTube Fenderとセットで購入

私がAmpliTube2を使い始めた頃に”Stealth Pedal”というペダル型をしたオーディオ・インターフェイスが発売されていました。その頃はちょうどProToolsがHDに切り替わってちょっとした時期くらいで、TDMからAAXにプラグインのフォーマットも変更されようとしていた時期だったでしょうか。私はProToolsがHDに切り替わって、LexiVerbが使えなくなった時点でProToolsをそれ以上アップグレードしていくのをやめ、一時期MacBookとMOTUのオーディオ・インターフェイスを使ったシステムをメインに使うようになっていました。何しろPro Toolsはアップグレードも100万単位でかかるので、ちょっと続けていくのは無理と思ったのでした。それはともかく、ノートPCでギター・アンプ・シミュレータを使うのにこのStealth Pedalは丁度良かったんですね。その頃、このStealth PedalとFenderアンプのシミュレータ・ソフトを組み合わせたバンドルが発売されていて、それを購入して使っていました。このセットにもFender Dual Showmanのモデリングによるアンプ・シミュレータがセットされていて、私の求めるサウンドと合致したということもあります。しかしこのワウ・ペダルのようなペダルにUSB端子がついていて、USBオーディオ・インターフェイスとして使えるなんていったい誰が考えたんでしょうね。まぁ、イタリアらしいと言えばイタリアらしいかもしれません。私としてはFender Dual Showmanとacoustic 360のモデリングがある時点で全然OKなのですが、その他のFender ChampやFender Twin Reverve、Roland Jazz Chorusなどのモデリングも特徴をよく捉えていて、よく使っていました。ただ私のやっているような音楽ではあまりMarshall系のアンプは出番が無かったかな。あとはacoustic 134のモデリングとかあるとよかったんですけど、そこまではさすがにリリースされていませんでした。(今ではAmpliTube 5になってますが、それにも搭載されてないですね)それでもこれだけのアンプ・モデルをカバーしていて、毎年それがどんどん増えていくというのは、なかなか魅力的ですね。ただこのAmpliTubeは録音の時にアンプ代わりに使用する際はそれほど気にならないのですが、AmpliTube 4あたりからミックスの際にリアンプしようと思ってトラックにインサートすると意外と重たくて、CPUに結構負担がかかるため、最近はハードウェアのアンプ・シミュレータ(Line 6 POD XT PRO)を使うことが多くなったこともあってあまり使っていませんでした。しかしバージョンも大分上がってきてAmpliTube 5となっていることもありますので、またちょっと使ってみようかなと思っています。

Waves GTR

Wavesのプラグインの中にもアンプ・シミュレータがあって、Wavesのプラグインが未だV8だった頃には使ったこともあったのですが、このGTRに関しては今は殆ど使っていないですし、バージョンアップもしていないのでV8のままなのですが、何故これを単品プラグインとして持っていたかが今となっては謎(笑)。もしかすると何かのDAWソフトにバンドルされて付いていたのかもしれません。WavesのバンドルとしてはMercuryバンドルにも含まれていて、そちらの方はバージョンアップしていますので、今でも使おうと思えば使えるのですが、なかなか出番がありません。私の中で特徴を消化できていないだけかも知れませんが、AmpliTubeみたいに「このアンプのモデリング」というのが分かりやすくないせいかもしれません。むしろWavesのプラグインだと、クリス・ロード・アルジによるCLA Guitarやジャック・ジョセフ・プイグによるJJP Guitars、またトニー・マセラティによるMaserati GTi、エディ・クレイマーによるEddie Kramer Guitar Channelなどと言ったエンジニアの名を冠したシグネチャー・シリーズの方が音の作り方が分かり易くて重宝しています。ただこれもCPUパワーを食うのがたまに傷ですね。それと、もれなくモノ・トラックもステレオ化されてしまうという(笑)。もちろんリヴァーブまで含めた処理になっているのでステレオ化されるのは当然と言えば当然なのですが、逆に使い難くなる場面も出てきてしまうのが難ですかね。

Natuve Instruments Guitar Rig5

Native InstrumentsにもGuitar Rigというアンプ・シュミレータがあります。これもAmpliTube同様スタンドアローンのアプリとプラグイン・バージョンとがあって、どちらかというとアンプ・ラックというイメージですかね。ラックマウント・システムのようにアンプ・ヘッドやスピーカー・キャビネット、エフェクターまでも組み合わせていって音作りをしていくというタイプ。私はプラグインとして録音済みのギター・トラックにインサートする使い方しかしたことが無いのですが、それもそんなに頻度が高いわけではないので、Marshall Plexi系とかHiwatt系とかしか使ったことがありませんが、リアンプ用のプラグインとして使うのならば、それほどCPUパワーを消費はしないようなので、複数トラックにインサートしても大丈夫でしょう。尤も使うアンプ・モデルによってもCPU消費率は変わるでしょうし、エフェクターを沢山使えばその分CPUパワーを使いますので、注意が必要でしょう。私が使っているのはGuitar Rig5ですが、それほどアンプの種類がたくさん網羅されているというわけではありませんが、Marshall系、Fender系、Vox、Hiwatt、Roland Jazz Chorus、Soldanoなど、主なところは押さえていますので、大抵の用途には間に合うような気がします。

UAD Softube Amp Room
Softube Amp Roomの使用頻度が高くなってきました

当スタジオで最近最も出番の多いアンプ・シミュレータ・プラグインはというと、ハードウェア・アンプ・シミュレータであるLine 6 PODを使うようになってから、録音の際にPODと実機のエフェクターとで音を作って、ミックス時は音を整える程度にアンプ・シミュレータを通して空気感を持たせる、みたいな使い方が多くなったこともあり、またかける時には何トラックもアンプ・シミュレータがインサートされますので、CPUに負担をかけないために、UADのアンプ・シミュレータ・プラグインを使うことが増えてきました。具体的にはSoftube Amp Roomを基本にして、Marshall系、Fender系、Jazz Chorus系みたいな大雑把な分け方で適したアンプを選んで、マイクの種類と位置関係をセッティングするという感じですね。基本的にはリアンプしてルーム感を付加するという使い方なので、ここで大きく音色を変えるようなことは無くて、アンプを通した歪み感を少し加える程度ですので、ほぼクリーン系のセッティングを使うことが多いです。逆にここで歪ませ過ぎちゃうと収拾がつかなくなることが多いですから。Softube社もネイティブ版のAmp Roomをバージョンアップして、様々なアンプのアドオンを追加することで、Marshall Plexi Super LeadやJubilee 2555など個別のアンプのモデリングを追加できるようにしています。UAD-2バージョンでは個別プラグインとしてPlexi Super Lead、Jubilee 2555、JMP2203などを用意していますので、ネイティブ版のプラグインとは違う方向性でリリースしていくようです。私のようにアンプで鳴らした空気感の追加が主目的だとそこまで細かくいろいろな機種を用意しておく必要はあまりない気もしていますが…。

ENGL E646とE765は最近入手しました

UAD-2のアンプ・シミュレータはSoftube Amp Room以外では、MarshallのPlexi、AmpegのSVT VR(この2つはハードウェアのバンドル・プラグインだったか?)とFender 55 Tweed Deluxeという50年代のツイード仕上げ時代のFender Deluxeを再現したモデルと、新しめのアンプとしてENGLのE646とE765を導入していますが、Fender 55 Deluxeは結構気に入っていまして、最近は使用頻度がかなり高くなっています。50年代のヴィンテージFender Deluxeの再現ということで、真空管アンプならではのウォームなトーンが売りだと思いますが、元々15Wとそれほど大きくない出力のアンプですので、クリーンなトーンに特徴があると思います。テレキャスターやストラトなどとの相性もよいようで、加えて、シンセのリードなどに使ってもウォームで太いサウンドになる気がします。もう一方のENGLは、マーティ・フリードマンやミック・ボックス、リッチー・ブラックモアなどどちらかというとハードロック系のギタリストが使っているアンプですが、ギター・ソロなどで歪みが足りないなと言う時のために導入してみました。使用例はこちらにアップした”Look at Yourself“なんぞで確認いただければと思います。アンプ・シミュレータに限らず、当スタジオでのUAD-2プラグインの稼働率はかなり高いのですが、私のように60~70年代のロックやジャズ・フュージョンをやっている者にとっては、なかなか使いでのあるプラグインが多くて、もはや必需品ですね。DSPを使うのでPC本体のCPUの負荷をあまり気にしなくてよいのも最近パワー不足が気になる私にとっては願ったりですし。そんなこんなで、当スタジオのアンプ・シミュレータ・プラグインをご紹介してみました。さらに使い込んだらまたアップしたいと思います。では。

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