今年の春に、ロサンゼルス近郊に住んでいる妹の家の近くで、7月にシカゴの野外コンサートがあることを知り、「今年はシカゴのデビュー50周年なのに来日の噂が無いからアメリカに行って見てみようかな」と思い立ちました。翌日にはロスのグリーク・シアターでもコンサートがあるので、2日続けて見られたらラッキーだなと思い、早速インターネットでチケットの予約を企てました。ところが、このPacific Amphitheatreでのコンサートは、OC Fairというオレンジ・カウンティの年に一度のイベントの一環としてのコンサートらしく、カリフォルニア在住者でないと予約ができないということが分かり、妹に連絡を取ってチケット取りを頼みました。その段階で生憎前方席は2席連番で取れない状態でした。この会場は妹の家から車で10分くらいの場所なので、妹には送り迎えだけ頼んで、一緒にコンサートを見るのは翌日のグリーク・シアターにすることにして、とりあえず一席を確保してもらいました。
シカゴのコンサートは日本に来るたびには当然見ていますが、アメリカで見るのは今回が初めてで、シカゴもこのところメンバー・チェンジが激しく、前任のベーシスト兼ヴォーカリスト、ジェフ・コフィは約1年しか在籍せず、ライブも見ることができませんでしたので、うかうかしているとまたいつ誰がやめちゃうか分からないという危機感が渡米の後押しをしました。もうひとつには、この1月に出張で渡米した時にたまたまロシアのシカゴのコピー・バンド、レオニド&フレンズの全米ツアーがあって、それを見ることができる幸運に恵まれたこともあり、やはり本場のロスでシカゴのライブを見ることに思い入れを持つことができたということがあります。しかし渡米の直前にはロバート・ラムが耳の不調からくる眩暈でコンサートを休んだとか、新ヴォーカリスト、ニール・ドネルのお母さんが亡くなったとか、「一体フル・メンバーでステージに立ってくれるのだろうか？」と心配するような出来事が降ってわき、ドキドキしながら飛行機に乗ることになったのでした。
会場のPacific AmphitheatreはOC Fair & Event Centerの一角にある野外劇場で、グリーク・シアターよりやや大きめのキャパ。日本でいえばよみうりランドEASTくらいのイメージでしょうか。当日の入場券はOC Fairの入場料込みで85ドルでしたが、最近高騰する日本の入場料に比べたらリーズナブルなお値段ですね。当日はその名もOC Fair(Orange County Fairの略らしい)というイベントが行われており、オレンジ・カウンティ近辺から大勢の人が押し寄せてくるので道路が激混み状態でした。会場内はオレンジ・カウンティの農産物や畜産品などの食材を紹介する見本市みたいな感じの催しを行っており、その会場を抜けてAmphitheatreに辿り着くという感じの順路になっていました。私は丁度開場時刻の10分前くらいに劇場入り口に辿り着いたのですが、アメリカではそんな早い時間に会場に来る人は少ないようで、未だ並んでいるのは30～40人くらいで、スムーズに入場できました。あちらでは既にバーコード入場券が一般的で、スマホでQRコードを提示するかプリントアウトしたバーコード付きチケットをスキャンして入場します。私もプリントアウトしたチケットを持参しました。
今回のツアーはGreatest Hits Tourと題され、シカゴの50年の歴史を振り返るといった趣旨のプログラムになっていました。シカゴのメンバーもオリジナル・メンバーはロバート・ラム(Key,Vo)、ジェームズ・パンコウ(tb)、リー・ロックネイン(tp,vo)の3人だけになってしまい、オリジナル・シカゴ・ホーンズの一人、ウォルター・パラゼイダーは健康上の理由で引退してしまいましたが、現メンバーのレイ・ハーマンも既に10年以上バンドとともにツアーをこなしており、ブラス・セクションのコンビネーションもウォルター時代と劣らないものになってきました。新たなフロント・マンとしてカナダ人のヴォーカリスト、ニール・ドネルを加え、ベーシストとしてブレット・サイモンズ、パーカッショニストとしてラモン・イスラスが参加、ウォーリー・レイジェスJr.がドラムスにコンバートされたというのが前回来日時のラインナップと変わったところです。
定刻の20:15を少し過ぎたところでメンバーがステージに登場すると、客席は大喝采。そしてショーはファースト・アルバムの1曲目を飾った”Introduction”でスタートしました。ひところ、シカゴのショーは”Introduction～Questions 67 And 68″のメドレーでスタートしていた時期がありましたが、今回のツアーではフル・バージョンで、ジミーとリーのソロもたっぷりフィーチャーして演奏してくれました。この曲のリード・ヴォーカルはロバートが務めるのが最近の定番となっていますね。ただこの日のショーでは、 “Questions”はカット。OC Fairの一環でのショーのためか、今回のツアーのセットリストから一部をカットしたセットリストでショーは進行していきました。2曲目の”Dialogue”から新メンバーのニール・ドネルが登場し、ハイ・トーンのヴォーカルでピーターのパートを歌いました。これまでシカゴのハイ・トーン・ヴォーカルといえば、ピーター・セテラ、ジェイスン・シェフ、ジェフ・コフィとベーシストが務めてきましたが、遂にハイ・トーンで歌えるベーシストを探すのを諦めてしまったかと思うとちょっと残念な気もします。
そのニールが歌う”Searchin’ So Long”に続く “Mongonucleosis”は、以前はジミーがティンバレスを叩いていましたが、今回は本職のラモンが叩いていました。そしてお馴染みの”Ballet for A Girl in Buchannon”に突入。”Colour My World”のイントロが始まると、私の隣に座っていた妙齢の女性が「まぁ、なんてことなの！この曲は私たちのウェディング・ソングだったのよ！もう４３年も前の話だけどね」と私に話しかけてきました。さすがアメリカ、シカゴの曲の生活への密着度が日本とは訳が違いますね。そんな風にシカゴの曲に対する思い入れをめいめいに持っている人たちが沢山聞きに来ているんだろうなと感じたコンサートでした。そういえばこの曲は最近すっかりリーのヴォーカル・レパートリーになりましたね。
コンサートも後半に入り、ロバートの”Does Anybody Really Know What Time It Is?”が始まると、会場はもう大合唱。日本ではこの曲をこんな風に合唱しちゃうなんてことはまずないので、大きな驚きでした。思わず私もサビでは”I don’t care about time, I don’t know”と歌ってしまいました。そしてちょっとセンチメンタルな懐古調のナンバー”Old Days”から、８０年代のヒット曲を続けた後ロバートがメンバー紹介。ニールを紹介するときには「彼はカナダから来たんで英語があんまりうまくないんだよ」なんてからかっていましたが、まぁ勿論ジョークでしょう。そして”Beginnings”,”I’m A Man”とファースト・アルバムからの曲を続け、レイのソプラノ・サックス・ソロをフィーチャーした”Just You’N Me”からラストの”Feelin’ Stronger Every Day”までを畳みかけるように演奏しきりました。最近”Feelin’ Stronger…”は後半部分しかやってくれないのはなんででしょうね。
そしてアンコールの”25 Or 6 To 4″ではジミーの二人の息子、ジョナサン(ds)とカーター(g)がゲストで参加。この二人は異母兄弟で、歳もかなり離れていますが、最初ジョナサンが出てきたときは「あれ、トリスか？」と思ってしまいました(笑)。カーターは未だ２０歳なんですね。ともあれ、やはりアメリカ本国で見るシカゴのコンサートにはこんな思いがけない楽しみもあるものなので、またいつかアメリカへ見に来ようと決心したのでした。
Setlist @Pacific Amphitheatre, Costa Mesa on 07/26/19
1. Introduction
2. Dialogue (Part I & II)
3. (I’ve Been) Searchin’ So Long
4. Mongonucleosis
5. (Ballet for A Girl in Buchannon)Make Me Smile
6. So Much to Say, So Much to Give
7. Anxiety’s Moment
8. West Virginia Fantasies
9. Colour My World
10. To Be Free
11. Now More Than Ever
12. Does Anybody Really Know What Time It Is?
13. Old Days
14. Hard Habit to Break
15. You’re the Inspiration
(Band introduction)
16. Beginnings
17. I’m a Man
18. Just You ‘n Me
19. Hard to Say I’m Sorry / Get Away
20. Saturday in the Park
21. Feelin’ Stronger Every Day(Second half only)
Encore:
22. 25 or 6 to 4(with Jonathan & Carter Pankow)