近頃では音源もソフトウェア化される時代となって、MIDIシンセサイザーをずらっと並べてレコーディングすること自体が少なくなってきました。とはいえ、私のスタジオには未だ実機のMIDI機器がそれなりにありますので、それらをコントロールするために、MIDIインターフェイスは必需品なのですが、需要が少なくなってきたのか、だんだん製品も少なくなってきましたし、私が愛用しているMTP AVのような多機能な製品は本当に少なくなってきてしまいました。オーディオインターフェイスにMIDIインターフェイスがついていて1台2役みたいな製品も増えているということも理由としてあるんでしょうね。そこで今回はMIDIインターフェイスの話を少々書き留めておきます。

私が一番最初にMIDIインターフェイスを購入したのはMacintosh SE/30を購入した1990年のことでしたから、もう30年以上経つんですね。SE/30は最初から音楽制作を目的に購入したマシンでしたから、同時にMark of the Unicorn PerformerとMIDIインターフェイスを購入しました。それが上の写真の下側にあるMidi timepieceでした。今はもう使ってないので、ラックから取り外してありますが、なぜかラックの上に乗っけられたまま今もスタジオ内に放置されています(笑)。

初代MIDI Timepiece
初代のMidi TimepieceにはLCD画面もなく、スイッチ類も最低限

Midi timepieceは、当時のMacのシリアルインターフェイスであるADB接続のインターフェイスですから、今では使いようがないのですが、当時としては8イン8アウトで各16チャンネルのMIDIをコントロールできたのと、SMPTEタイムコードで同期する機能があったので、スタジオワークをする上でも十分な機能を持ったインターフェイスでした。とはいえ、当時スタジオでマルチレコーダーとシーケンス・ソフトを同期させるのにはRoland SBX-80をメインに使っていましたので、スタジオでMidi timepieceの同期機能を使うことは余りなかったと思います。しかしともかく多チャンネルのMIDIインターフェイスなので、当時私がスタジオに持ち込んでいた機材ラックには、このMidi timepieceとKORG M1R、Roland D550、YAMAHA TG77、E-mu Proteus 1XRなどのラック・モジュールをMIDI接続し、場合によっては1つのMIDIポートに複数のMIDI音源がセットアップされていました。それとこのMidi timepiceを使ってデジタル・マルチレコーダーと同期させたときの精度が、他のMIDIインターフェイスを使った時よりも高精度であったという記憶があります。まぁ0コンマ何マイクロSECとかの単位の話なので、気持ちの問題かもしれませんが。しかもこの初代のMidi timpieceはスイッチ類も殆どなく、設定は全てClockworksというコントロールソフトで行うという割り切り方で、スイッチ類を付けることでのハードウェア的故障を防ぐという質実剛健さでした。フロントパネルの中央にはモード・スイッチがあり、右側がMacintoshの標準的なシーケンスソフト汎用の1MHz ASYNCモード、左側がMOTUのPerformer専用のFast 1xモードでした。そしてフロントの一番右側には、2台のMidi timepieceを接続した際に、ユニットのポート番号を1-8と9-16に切り替えるスイッチがあり、あとはシグナルが来ていることを表示するLEDランプがあるだけでした。しかしそれでは使いにくいという声があったのか、モデルチェンジしてMidi timepiece IIとなった時にはスイッチ類や液晶パネルが付加されていました。

MTP AV/USB
Midi Timepiece AV。こちらはUSB接続タイプ。

その後、液晶表示の付いたMidi Timepiece AV(通称MTP AV)というMIDIインターフェイスにバージョンアップするわけなんですが、最初はオリジナルのMidi timepieceと同様、ADBインターフェイスで接続するモデルでした。何年ぐらいにMTP AVに乗り換えたか記憶が定かではないのですが、MacをG4 Macに切り替えた時にADBポートが無くなってしまったので、モデムポートをADBポートに置き換える改造をした覚えがあります。このMTP AVはもう一台Midi Timepieceをネットワーク接続して16 in 16 outのMIDIインターフェイスとして使えるようにする機能があり、(この機能自体は旧タイプのMidi timepieceにもありましたが、Midi timepieceを1台しか持っていなかったので使っていませんでした)旧タイプのMidi timepieceともネットワーク化できるので、旧MTPとADBポート同士をネットワーク接続して使っていました。その後、USB接続のMTP AVを入手しましたので、Midi Timepice AV/USBをメインに、ADBバージョンのMTP AVをネットワークのスレーブとして接続するように変更しました。これをそのまま現在も使っています。

MTP AV Port9-16を設定したネットワーク接続機
ネットワーク接続されたMTP AVのLCD画面 ID 9-16と表示されている

上の写真はスレーブ側のMTP AVのLCD画面ですが、Macに近い側のMTP AVがID 1-8、遠い側のMTP AVが9-16という設定になっていて、この2台が見かけ上1台の16ポートのMIDIインターフェイスとして機能します。私の場合にはMacに近いコントロールデスク上にラックマウントされたMTP AVには曲データを打ち込む際にモニタ用に使っているSC88-ProやProteus 1XR、Roland M-VS1などのモジュールとコントロールサーフェスのBaby HUIなどが接続されており、もう1台のMTP AVは丁度メインミキサーのYAMAHA 02Rの下にあるラックにマウントされていて、その02Rや上の写真の下側にある今は殆どドンカマとしてしか使っていないRoland R8-Mや、ピアノ専用のKORG SG-Rack、Oberheim Matrix1000などが接続されています。Digital Performerをシーケンス&レコーディング・ソフトとして使用した場合、1台目のMTP AVをUSB接続すると、双方のMTP AVのMIDIタイムスタンピング機能が有効になります。尚、2台のMTP AVをネットワーク接続するには、MTP AVのROMのバージョンが2.01以上である必要があるようです。

Audio MIDI設定
CatalinaのAudio MIDI設定とClockWorks。MTP AVも16ポートのMIDIインターフェイスとして認識されている。

ところで、今回この記事をアップしようと思ったきっかけは、当スタジオのメインマシンをiMacからMac Proに変更してシステムがCatalinaに変わったことがきっかけでした。MOTUのオフィシャルではMTP AV/USBのサポートOSはMacの場合10.14(Mojave)までとなっていて、Catalinaはサポートされなくなったことになっているのですが、果たして本当に使えないのかを検証してみようということで、チャレンジしてみました。Catalina対応のMOTU MIDI インターフェイス・ドライバーv.82544をダウンロードし、インストールしてみたところ、無事にMTP AVも認識しました。上図のスクリーンショットのAudio MIDI設定のように、ネットワーク接続したMTP AVは16ポートのMIDIインターフェイスとして認識されており、Clockworksアプリ上も16ポート認識されています。とりあえずCatalinaでこのバージョンのドライバを使う分には、MTP AVもちゃんと使えるようです。但し、現在MOTUのホームページの構成が変更されて、ダウンロードページにこのバージョンのドライバが無くなり、プロダクトごとにソフトやマニュアルを選択するようになったため、ダウンロードが出来なくなったようです。これ以上のバージョンのドライバでMTP AV/USBが使用可能かは未テストですので、ひとまずv.82544では使用可能というご報告までに留めておきます。私としてはMTP AV/USBが使えなくなると、非常に痛いことになるので、取りあえず使える環境の維持を優先しました。またアップデートする機会がありましたら報告したいと思います。

ところで上の図のAudio MIDI設定の画面には、ProteusやSC88-Pro、Baby HUIなど、Audio MIDI設定のデフォルトではアイコンが用意されていない機器のアイコンを加えていますが、これはそれらの機器の画像データをライブラリ・フォルダ内のAudio>MIDI Devicesフォルダに加えてあげることで表示できるようになります。興味のある方は試してみてください。

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